■消火器の設置要件

消防法により、すべての消防用設備には設置が義務となる要件が定められており、消火器については以下のとおりとなっております。


〇設置義務の有無について

以下の表から、管理している防火対象物の用途を参照し、延べ面積が、設置基準に記載されている面積以上であれば消火器を設置する義務が発生します。
用途が不明または判別困難な場合には、通常、事業開始時に消防機関が令別表第1欄に記載されている「⑴項イ」等の項判定を行っていますので、事業開始時の消防関係提出書類等の控えで確認することができます。 

〇設置必要本数について

まずは表の能力単位欄から、当該事業所に適合する「必要能力単位」を求めます。

⑷項 物品販売店舗の場合
※条件  地上1階 地階・無窓階なし 木造(耐火構造以外) 延べ面積500㎡

能力単位の算定面積は100㎡なので 
500㎡ ÷ 100㎡ = 5単位(端数がある場合には切り上げます)

この計算で5単位の消火能力が必要であることがわかりました。
 
  
続いて必要本数を求めます。
必要本数は使用する消火器の規格により異なります。
よく使用されている以下の消火器を例に必要本数を求めます。

10型消火器 = 3単位
6型消火器 = 2単位
4型消火器 = 1単位

 

 









これにより、必要能力単位が5である防火対象物に必要な消火器の本数は、

10型消火器 ⇒ 5 ÷ 3 = 2本(10型のみ設置する場合)
6型消火器 ⇒ 5 ÷  2 = 3本(6型のみ設置する場合)
4型消火器 ⇒ 5 ÷  1 = 5本
  
となります。
10型と6型を組み合わせて設置しても構いません。

  
しかし、これは建物の規模のみに着目して本数を求めただけで、まだ必要本数は確定しません。


消防法施行規則第6条には、

第3項 少量危険物(能力単位加算規定)
第4項 電気設備(本数加算規定)
第5項 鍛造場、ボイラー室、乾燥室等(能力単位加算規定)
第6項 歩行距離(消火器具に至る歩行距離が20m以下で設置)

というように能力単位又は本数の加算規定が設けられており、該当する場合は基準に適合させなければなりません。


例)少量危険物(200リットルの灯油)を貯蔵したホームタンクが設置されている場合
 ※少量危険物の定義は、指定数量の5分の1以上指定数量未満
 ※灯油の指定数量は1,000リットル
 ※貯蔵量又は取扱量を指定数量で除した数以上の能力単位を「当該貯蔵場所」に加算して設置

 1000 ÷ 1/5 = 200  貯蔵量が200リットルなので少量危険物に該当

 200 ÷ 1000 = 0.2  端数は切り上げるので1(本) 
  
となり、この物品販売店舗に設置される消火器の本数は、10型の場合

 建物規模による算定本数 2本
 少量危険物による加算  1本

 合計 3本となります。

さらに、第6項の規定により、建物のどこから歩いても20m以内に消火器が設置されていない状態であれば、さらに加算されます。 
実際には能力単位から算出される本数より、この歩行距離を基準とした本数のほうが多くなることが多いため、20m以内に設置という要件のほうが重要である場合が多いです。


消防設備の中で一番多く目にする消火器ですが、消火器ひとつとってもこのように複雑なルールにより設置されていることがわかります。
 
基準より多く設置されている場合を除いて、建物に設置されている消火器はすべて計算されたうえで配置されています。
 
1本でも紛失してしまうと、それだけで法令違反となってしまいます。

1本1本きちんと把握し管理することが重要となります。
 
また、消火器の使用期限は10年となっています。
期限切れ消火器は設置していても法令基準を満たしません。
必ず消火器本体のラベルに記載されていますので、期限切れとならないよう定期的な確認が必要です。