■自衛消防訓練の必要性
 自衛消防訓練を行わなければならない根拠法については、消防法第8条第1項、消防法施行令第3条の2第2項、消防法施行規則第3条第10項及び第11項などに規定されています。

〇消防法施行令第3条の2第2項
 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。

〇消防法施行規則第3条
(第10項)
 令別表第1⑴項から⑷項まで、⑸項イ、⑹項、⑼項イ、⒃項イ又は⒃の2項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第3条の2第2項 の消火訓練及び避難訓練を年2回以上実施しなければならない。
(第11項)
 前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。

 上記のとおり、防火管理者の選任が必要な防火対象物は、同時に自衛消防訓練の実施も義務付けられ、特定用途防火対象物については年2回以上実施することとされています。
 

 また、訓練を実施する際にはあらかじめ消防機関へ通報しなければならないこととされており、消防機関所定の様式に従って訓練内容などを通知します。
 この場合の通報とは、訓練実施の直前に119番通報をするという意味ではなく、単に消防機関へ訓練実施の事前連絡をしておくという意味です。

■訓練の種類と内容
 自衛消防訓練には総合訓練と部分訓練があります。

〇総合訓練とは以下の訓練を総合的に行うことを指します。
・消火訓練
 建物内に設置されている消火設備を使用して、火元の制圧を試みる訓練を行います。
 訓練では、この火災初期の消火が失敗したことにより火災が拡大することを想定して通報、避難の訓練へ発展します。
・通報訓練
 実際に119番通報をすることにより、正確に情報を伝え、また、消防機関からの支持要請等に応対する訓練を行います。
 もちろん火災通報装置を使用しても構いませんが、制限が加わる場合があります。
・避難訓練
 すべての在館者等を建物内から避難させる訓練です。

 これらの訓練をロールプレイング方式で行い、最終的に管理権原者又は防火管理者が到着した消防隊に逃げ遅れやけが人の有無を含めた火災の状況を報告するまでを想定して行います。

〇部分訓練とは総合訓練に掲げられた訓練のうち、任意に部分的に行うことを指します。

■訓練の実施
 総合訓練は、以下の内容を一連の流れで行うことが望ましいとされています。

<訓練の実施例>
 1 火災発生
 2 火災の発見
 3 初期消火の実施
 4 火災の周知
 5 対策本部の設置
 6 火災通報
 7 避難場所の指定
 8 避難の呼びかけ(放送等)の実施
 9 避難の開始
 10 逃げ遅れの有無の確認
 11 避難者数及びけが人の有無の確認
 12 火災状況及び被害状況の把握
 13 到着した消防隊へ報告

 非常に多くの項目があり、計画者は頭を悩ますものと思います。
 一例ですので、当然これにさらに訓練内容を加えても構いません。
 事業所ごとに実情に則した訓練を実施することが火災時の安全につながります。

 当事業所では、より効果的な自衛消防訓練を行えるよう、準備段階でのアドバイスや当日の訓練における消防用設備等の活用についてもご対応しております。
 あらかじめ訓練担当者に出火場所を伝えることなく、開始と同時に訓練計画者の任意の場所の火災感知器を作動させるなど、訓練方法に知恵と工夫を加えることによって高い防火意識を生み出すことができます。

 訓練日が楽しくなる、そんな防火対象物とすることができたなら、そこから防火安全は強固に積み上げられていくことでしょう。