■誘導灯及び誘導標識の設置要件
消防法により、すべての消防用設備には設置が義務となる要件が定められており、誘導灯及び誘導標識については以下のとおりとなっております。
〇設置義務の有無について
以下の表から、管理している防火対象物の用途を参照し、延べ面積が、設置基準に記載されている面積以上であれば誘導灯及び誘導標識を設置する義務が発生します。
用途が不明または判別困難な場合には、通常、事業開始時に消防機関が令別表第1欄に記載されている「⑴項イ」等の項判定を行っていますので、事業開始時の消防関係提出書類等の控えで確認することができます。
■誘導灯の基準
誘導灯は、特定用途防火対象物のすべて、非特定用途防火対象物の⑼項ロ及び地階などに設置する必要があります。
⇒屋外へ通ずる又は区画の外へ通ずる出入口などに設置されます。
通路誘導灯(白色)
⇒避難口誘導灯へ誘導する目的で廊下などに設置されます。
誘導灯の内部には常用電源、非常電源が配線されており、普段は常用電源を用いて点灯していますが、停電時は自動的に非常電源に切り替わり点灯が継続され、非常口の位置及び避難の方向を示しています。
非常電源による点灯時間は20分以上とされていて、普段は常用電源により充電されています。
誘導灯の電源回路は専用に設けることととされていますので、専用のブレーカーが存在します。
点灯と充電の役割を担っているので、特殊な事情が認められた場合を除いて、原則誘導灯の電源を遮断することはできません。
現在主流となっているLED型の誘導灯は、ランプの寿命がおよそ60,000時間(約6年)とされています。
従来型の蛍光灯タイプのものについては、寿命がおよそ10,000時間(約1年)とされていますが、常に点灯していることとLED型に比べ電力消費が大きいことから劣化が早く、点灯時間は公表値より短くなる場合が多いです。
※消費電力の例
C級の場合(最小の型)
蛍光灯型 15W
新LED型 1.1W
消費電力が約15分の1となり電気料金も抑えられることから、機器の寿命やランニングコストを計算してもLED型が推奨されます。
誘導灯本体の使用推奨期間は10年。
非常電源(バッテリー)の使用推奨期間4~6年とされています。
■誘導標識の設置基準
誘導標識は誘導灯の設置を要する防火対象物以外のすべての防火対象物に設置する必要があります。
主に非特定用途防火対象物に設置されることになりますが、誘導灯を設置した場合には誘導標識の設置の必要はありません。
■緩和措置
平成11年に誘導灯に関する規定が改正されました。
旧基準では設置台数が現行基準と比べて多く設計される場合があったため、新基準で再設計を行った場合、設置台数を減少させられる場合があります。
法令上は最低限の台数が設置されていればそれより多い分には構わないということになりますが、コスト面で重い負担となります。
間仕切りや区画、使用形態が影響しますので、すべての防火対象物において設置台数減少の検討が可能とは言えませんが、改正以前に設置された誘導灯については再設計の余地があります。
現行基準ではすべての区画等に誘導灯の設置が求められておらず、設置を要しない部分等が規定されています。
・居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし、かつ、識別することができる階で、当該避難口に至る歩行距離が避難階にあつては20m以下、避難階以外の階にあつては10m以下であるもの
・主要な避難口に附室が設けられている場合は、附室に設置されていれば避難口への設置は省略できること
・100㎡未満の居室(従業員等の建物関係者のみが使用する居室は400㎡)
・階段の踊場に非常照明が設置され、かつ階の表示がされているもの。
などです。これらには誘導灯を設置しなくても問題はありません。
他にも用途によっても緩和措置が細かく規定されています。
ただし、「容易に見とおすことができる」ことが条件となっている規定については、その条件において消防機関の判断を仰ぐ必要があります。
また、消防機関によっては独自の規定により緩和措置が定められている場合がありますので、調査の末、緩和措置に該当する場合には部分撤去等が認められることになります。
■蛍光灯の製造等の終了について
蛍光灯については、2023年11月の「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」において、2027年末までに蛍光灯の製造・輸出入が国際的に禁止されることを受け、すべての蛍光灯が販売を終了します。
使用や在庫販売は可能とのことですが、そもそも寿命の短い蛍光灯の在庫となると安心できるものではありません。
生産されないので在庫数にも期待できません。
整備不可能となりますので、従来型を使用している場合には2027年中にはLED型への交換が必要になります。