■防火対象物

 防火対象物とは、消防法が定める防火規制の対象となる建築物等を言います。
 名前は似ていますが、建築基準法が定める耐火建築物や準耐火建築物などとは意味が違います。

 さらに消防法には似た名称で消防対象物というものもあり、防火対象物と消防対象物は以下のとおり定義されています。

<防火対象物>
 防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。

<消防対象物>
 消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。

 はい、まったく違いがわかりません。消防法はこんなものばかりです。

 簡単に説明すると、消防対象物はその意味が広く、火災になるおそれのある物件すべてをいいます。
 防火対象物は、その中でも特に強い規制をしてでも安全の維持を求められる物件として指定を受けるものになります。

 例を挙げると、一般住宅は消防対象物ですが、防火対象物には指定されていません。
 住居等でいえばアパートやマンションなどの集合住宅は防火対象物として⑸項ロに指定されています。

 自家用自動車は消防対象物ですが、防火対象物には指定されていません。
 お客さんを乗せるバスなど、道路運送車両法に規定される「消火器の設置が必要な車両」は防火対象物として⒇項に指定されています。

 一定規模以上の単位で規制が行われていることがわかります。

 防火対象物は以下の表のとおりとなっています。

 

防火対象物は、その性質により大きく2つに分類することができます。

■特定用途防火対象物

 主に不特定多数の者を収容する施設(就寝の用に供する施設を含む)

 ⑴項~⑷項、5項イ、⑹項、⑼項イなど

■非特定用途防火対象物

 主に特定の者を収容する施設

 特定用途以外の防火対象物
 ⑸項ロ、⑺項、⑻項、⑼項ロ、⑽項~⒂項など

 この2つの分類により、規制の強い特定用途防火対象物と、比較的規制の弱い非特定用途防火対象物に分けられています。

例)
 ☆特定用途防火対象物
  消防設備等点検報告   1年に1回
  防火対象物点検報告   1年に1回(収容人員300人以上などの場合) 
  防火管理者の選任義務  収容人員30人以上(⑹項ロは10人以上)
  自衛消防訓練の回数   1年に2回以上

 ★非特定用途防火対象物
  消防設備等点検報告   3年に1回
  防火対象物点検報告   非特定用途防火対象物は該当なし
  防火管理者の選任義務  収容人員50人以上
  自衛消防訓練の回数   定期的に(1年に1回以上)

 このように差が設けられていますが、規制の強弱にかかわらず、実情をよく把握し計画的にコンプライアンス設計をすることがいざというときのための備えに繋がります。