■防火管理者

 防火管理者とは、防火対象物の防火に関する責任者のことで、消防法第8条の規定により定められた数以上の人員を収容する事業所に対して選任する必要があります。

 防火対象物の管理について権原を有する者は、防火管理者を選任したならば「防火管理者選任(解任)届出書」により、消防機関へ届け出なければなりません。
 その際には添付書類として「防火管理講習の終了証」の写しを求められます。

■防火管理者の基準
 防火管理者は以下の表に基づいて選任の義務が生じます。

 表から読み取れるとおり、特定防火対象物は30人以上、非特定防火対象物は50人以上、特定防火対象物の中でも特に規制の厳しい⑹項ロについては10人以上の収容人員があれば選任の必要があります。



■収容人員

 収容人員は以下の表のとおり求めることとされています。

 ⑹項や⑺項などを除いて、防火対象物の多くは実際に現在何人収容されているかではなく、面積やいすの大きさなどで算定するよう定められています。
 つまり、消防法では「最大収容できる人員」という考え方になっています。
 
 ですので、特定用途防火対象物の場合、主に収容人員30人以上から選任義務が発生しますが、算定上35人となっているが今現在は26人しかいないから防火管理義務は発生しないなどとは言えないのです。 

例) ⑷項 コンビニエンスストア
    常時従業員数 2人
    売場面積 112㎡(バックヤード、トイレ等は除く)

   〇算定方法
    112㎡ ÷ 4㎡ = 28(人)
    常時従業員数   = 2(人)

    合計 30人  ※防火管理義務あり

 

 このとおり、面積をもとに収容人員を算定し、それに時間帯ごとに従事している平均の従業者数を加えて合算するのが一般的な求め方となります。
 面積が基準に満たなくても従業者数が増えることで防火管理義務は発生する場合もあるので、この「最大収容できる人員」の理解が必要になります。

 また、収容人員算定の表に記載のない部分では、例えば⑸項イの和室部分については端数処理方法が記載されていないため、端数を切り上げて処理するといった方法を採用している消防機関も存在します。
 
 より厳しい基準を採用しているということになりますが、記載のない部分の算定方法については所轄消防機関の判断によりますので理解が必要になります。

 このように、防火管理者は火災が発生した際には30人以上、又は50人以上の安全を確保するためのリーダーとして統率しなければならない義務を負うことになります。
 相当な負担を負うことになりますが、人の命に代えられるものはありません。

■防火管理者の資格
 防火管理者となるには、定期的に開催されている「防火管理講習・新規講習」を受講します。
 甲種、乙種と2種類に分けられていますが、適用は以下のとおりとなっています。

 甲種 特定用途防火対象物  延面積300㎡以上
    非特定用途防火対象物 延面積500㎡以上

 乙種 特定用途防火対象物  延面積300㎡未満
    非特定用途防火対象物 延面積500㎡未満
 
 なお、講習は甲種2日間、乙種1日の日程で受講し、考査に合格する必要があります。
 
 現在はオンラインでの受講も可能となっておりますので、以前と比べて受講ハードルは下げられています。

 防火管理講習を修了していなくても、防火管理について同等以上の知識を有すると認められる場合には防火管理者となることができる規定も設けられております。
 内容は以下のとおりです。

■防火管理者の責務 
 防火管理者を定めたならば、防火管理者は消防法第8条第1項に規定されているとおり、以下の業務を誠実に行わなければなりません。

消防法第8条第1項

1 消防計画の作成
2 消火・通報および避難の訓練の実施
3 消防用設備等の点検および整備
4 火気の使用または取扱いに関する監督
5 避難または防火上必要な構造及び設備の維持管理
6 収容人員の管理
7 その他防火管理上必要な業務

 また、防火管理義務に違反した場合、厳しい罰則が設けられています。

〇消防法第41条 次のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
 第2項 第8条第4項の規定による命令(防火管理業務適正執行命令)に違反した者

〇消防法第42条 次のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 第1項 第8条第3項の規定による命令(防火管理者選任命令)に違反した者

 


 法令違反は、知らなかったでは済まされません。

 法律を守り、人を守り、そして維持していくことが重要です。